「寒さが厳しい地域」の“厳冬期”を舞台とした物語には、本当に寒々しい情景が描写されるのだが、そんな場所で「猟奇的事件」が発生しようものなら、それはとんでもなく“寒い”物語となる…
とは言ってみても、そういう寒々しい中にこそ、興味深い謎解きやら、劇中人物達の“人間”が滲み出ていて、非常に愉しいのだが…
↓本作は「寒さが厳しい地域」の“厳冬期”を舞台とした物語で、劇中で「猟奇的事件」が発生し、その謎を追う刑事達が活躍する物語だ…
冬の生贄(上)(創元推理文庫)
冬の生贄(下)(創元推理文庫)
↑スウェーデンで好評を博しているシリーズの第1作を翻訳したものであるという…なかなか面白かった!!
本作の舞台となるのはスウェーデンの地方都市、リンショーピンである。ストックホルムの南で、内陸の方だ。本書を紐解くのであれば、本にはスウェーデンの主要都市を示した地図が出ているので、リンショーピンの位置関係も確かめて頂く事が出来る。冒頭の方に、主人公の愛車が寒さで不具合を来す場面が出て来るのだが、これは北海道で言えば「氷点下20℃級」が見受けられる内陸や山間部で見受けられる現象で、これだけでも「寒さ…」が非常に伝わった…
本作の主人公であるモーリン・フォシュはリンショーピンの警察に勤務する女性刑事である。30代半ばに届かない年齢ながら、極若い時期の結婚、妊娠、出産で13歳の娘が居るという状況である。
或る酷く寒い冬の朝、出勤しようとした時に愛車の不具合に出くわして困っていたモーリンを、何時も仕事で組んでいる“ゼケ”ことザカリアス・マッティンソン刑事が車で迎えに現れる。事件発生である…
「事件発生」は何時でも「拙い状況」ではあるが…今般は「異常な状況」でもあった…何かの儀式のように、150kg近い巨体の男の遺体が、野原の真ん中の木に吊り下げられていたのである…事件は程無く“冬の生贄”という渾名が付くことになる…モーリン達、リンショーピン警察の捜査員は、不可解な事件の謎に挑むことになる…
スウェーデンの刑事モノ…旧くは“マルティン・ベック”、やや新しい“クルト・ヴァランダー”等、「動いているスウェーデン社会」の中で人々の問題意識の中にもたげていることを取り入れてみたり、劇中人物達の背景や暮らし振りの描写を通じて、スウェーデン社会の縮図的な話しが盛り込まれるというのが「善き伝統」のようになっている面が在ると思うが、本作にもそうした面が在る。
過去の有名作品にせよ、本作にせよ、更に言えば劇中人物達は「スウェーデン社会」というような“カッコ”を取り払った、「作品が描いている時代」の「普通な人々」を確り描いている。本作では…モーリンは極若い時期に産んだ娘が難しい年齢に差し掛かり、厳しい仕事を抱える他方で色々と苦慮している…スポーツ選手として嘱望される息子が居ながら、何かその関連事項に感心が向けられない同僚…難病に冒された妻の介護を抱える同僚…“移民2世”でありながら昇進して注目されている上司…色々な劇中人物が居る…そして、「ネタばれ」を避ける意味で詳述はしないが、モーリンが捜査対象とする一家も一寸独特である…
「作品が描いている時代」の「普通な人々」を確り描いた骨が太いドラマだが…「寒さが厳しい地域」の“厳冬期”を舞台とした物語で、劇中で「猟奇的事件」が発生と「敢えて夏季に!!」奨めてみたい作品だ…
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