幕末期、欧米諸国の船が日本に入港するようになって、色々な事が在ったそうだが、それらは知られていたり、知られていなかったりである…
↓その「知られていなかった」に注目した、“時代モノ”の「在り方」を地で行くような作品に出会った!!

富樫倫太郎/箱館売ります 上 中公文庫

富樫倫太郎/箱館売ります 下 中公文庫
↑夢中で読み進み、大変愉しく読了した!!
函館港―往時は“箱館”―が開港されたのは古い…早速に欧米諸国の船が寄港するようになり、領事館も開設され始めたが、一つ不思議なことが起こった。農場経営を目的に、プロシア人に広大な土地が貸与されたのだ…これは場合によっては、“香港”や“マカオ”のような「列強の租借地」という型で植民地化されてしまう危惧を孕んだ内容のお話しだ…幕府、新政府、箱館政権と土地貸与は受け継がれ、明治時代に入ってから解消された案件であるという…
これは「余り知られていない」話しだが、“史実”である…本作はこの意外な“史実”に光を当てている物語だ…
箱館近郊の村で学問塾をやっていた平山金十郎は“お尋ね者”になってしまい、山中の洞窟に逃げ込んで潜伏していた。兄弟弟子の斎藤順三郎らと、“左幕”か“勤皇”かで激しく意見が分かれていたが、“左幕”を唱える金十郎は、五稜郭に入った新政府側の箱館府襲撃を目論む。しかし、事の重大さ故に仲間が密告に及び、逃げたのだった。そして高額な懸賞が掛けられた“お尋ね者”となってしまっていた…
その金十郎…榎本武揚の旧幕府軍が箱館にやって来たことを知り、山の洞窟から抜け出して活動を始める…彼は榎本の箱館政府の仕事をするようになる…箱館奉行並である中島三郎助の下で働く…
榎本ら旧幕府軍が箱館に来ようとしていた頃、「ロシア領事館の書記官」ということになっているユーリイ・ザレンスキーは荒んでいた…日本の内戦状態に乗じて、ロシアに利権をもたらそうと工作に勤しんでいた彼は、“第三部”と呼ばれる秘密警察の工作員だった…何らの利権を得ることも叶わないまま、帰国してシベリアや北極地方への左遷を待つ身だったのだ…そんな時、プロシア人のガルトネル兄弟が、巧く立ち回って農場の用地を拡げたことや、榎本らの箱館入りで戦局が動くことを知る…「好機到来」とザレンスキーは行動を開始する…
ザレンスキーが巡らせる陰謀…用地貸借交渉の行方…陰謀に嵌められそうな面々と、陰謀に疑念を抱いて戦う面々…事がどのように展開するのか?是非、本書を紐解いてみて頂きたい!!
陰謀に疑念を抱いて戦う面々の中には…あの土方歳三が居る!!戊辰戦争期の箱館を舞台に展開する、なかなかにスリリングなサスペンスであり、アクションも秀逸である…
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