『電車のデザイン(カラー版)』

↓“水戸岡鋭治”、“デザイン”と視て、思わず入手して愉しく読了…或いは視た一冊である…



電車のデザイン カラー版(中公新書ラクレ)

↑最近は、嘗ての青系のカバーが緑系のカバーに換えられているかもしれないが、内容は変わらない筈だ…

本書の前半の方―2/3近く―は、「水戸岡デザイン作品集」であり、残りがインタビュー記事を整理したようなコメントで、彼の仕事への取組みに関する考え方等が読める。

コメント部分を読んだが、敢えて一口に整理するなら…「JR九州と一寸した繋がりが出来たことが切っ掛けとなり、かの787系特急電車の仕事を手掛け、それが望外に高い評価を得たことから何時の間にか“鉄道のデザイナー”と巷に認識されるに至っているが、自身では単に“デザイナー”としてそれまでと変わることなく仕事を続けるばかりである」というのが主旨であろう…実際、彼の率いる“ドーンデザイン”は小さなレストランから大きなビルのエントランスに至るまでの「公共空間を演出」という延長線の中で鉄道車両の仕事もしているのである。鉄道車輛のような「公共の乗り物」は、或いは“街並み”と同じようなものなのかもしれない。

実際、水戸岡氏らが手掛けた鉄道車輛に乗車する機会が在った。と言うより、評価が高いことを聞き及んでいたので、九州旅行の際に機会を「設けた」面も在る。例えば熊本・鹿児島間を新幹線で移動しようとした時には、時刻表を睨んで“N700”と書いていない列車に乗るようにし、熊本駅の駅員さんに「この列車、800系ですよね?!」と尋ねることまでしたのだった…

そうした新幹線から「地域の足」になっている列車に至るまで、水戸岡氏らが手掛けた鉄道車輛の車内は何れも「居心地の好いカフェか何かのような」感じを目指しているように思った。実際…どの車輛にしても「このシート…自宅に欲しい!!」と冗談のようなことを思い付く程に心地好く、見栄えがするモノが配されていたのだ…そして、例えば特急電車では座席上の荷物を置くスペースは、飛行機に見受けられるように“ボックス”になっていたのだったが、「安全・便利・美しさ」というような様々な要素が巧く並立するように知恵を絞った跡も伺える。

評判の車輛の他、本書には水戸岡氏が手掛けた駅等も紹介されている。彼の提案したデザインに依拠して設計し、新築したと見受けられる建物も在ったが、そういうもの以上に「既存施設の内装や外観をリニューアル」という事例が興味深かった…

本書はとりあえず読了したのだが、興味深い写真、また愉しい旅を想起する写真が多く収められていることから、手が届く場所に置いて何度となく眺めそうな感じがする一冊だ…

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