鹿児島・石橋記念公園(2012.12.16)

鹿児島市内の周遊に便利な“シティービュー”というバスに乗っていると、「石橋記念公園」という停留所の案内が在る。

何の知識も無いままにこの「石橋記念公園」等と聞くと、「何かで立派な事績が在る石橋某さんという人が居て、その関係か…或いは石橋某さんという人が整備していた御屋敷の庭園のような場所が公園化されているか…」等と思ってしまったが…それはトンチンカンな話しだ…

「石橋記念公園」とは、文字どおり「石造の橋の歴史を伝える公園」である…

鹿児島市の中心を流れる 甲突川(こうつきがわ) には、かつて上流から 玉江橋、新上橋、西田橋、高麗橋、武之橋 の5つの大きな石橋が架かり、「甲突川の五石橋」として親しまれていたという。

この「甲突川の五石橋」は1840年代に相次いで建設された。かの調所広郷が貯めた資金が投下されたらしい。岩永三五郎という石工が肥後から招聘され、その指導下で工事が進められたという。

1990年代に至るまで、橋は現役で利用され続けていたが、1993年の水害で新上橋と武之橋が流失してしまい、他の3つも被害を受けてしまった。堅牢な石造の橋も、150年を経て川を巡る状況が変化してしまっている中で、水害に敵わなかった…

やがて橋は新たなものを架けることにして、3つの石橋は別な場所に移して、文化遺産として後世に伝えることに決した。その「文化遺産として石橋を後世に伝える」ための場所が「石橋記念公園」である…

今般、私は磯海水浴場の辺りからゆっくりと歩いてこの石橋記念公園に向かった。公園に着いてみれば、近隣の小学生位の子ども達が遊んでいたり、もっと幼い子ども達とそれを見守る親達が居たり、近所に住んでいるか勤務しているらしい人達が足早に通り抜けたりと、「街の一隅の公園」として活用されている感じだ…座って休む場所も在り、また御手洗いや飲料の自販機も据えられていて、歩き回る途中に寄ってみるにも好適である…

↓これが最初に視た玉江橋…
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↓こちらは高麗橋…
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↓そして西田橋…
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公園に在る3つの橋の中、建設当時に「最も力が入った」とされているのが西田橋である。これは鹿児島の城から九州街道へ繋がる道筋に相当する場所に架けられた橋である。島津家中の人達が往来した場所だ。石造の橋の以前には、木造の橋が架かっていたというが、その木造橋時代の欄干に据えられていた青銅製の擬宝珠が移設されている。

この西田橋は「重要橋梁」という扱いで、城下町側の方に門が設置され、通行が管理されていたのだそうだ。この門は西南戦争の頃まで在ったということで、写真も在るようだ。この石橋記念公園では、その門も再現されている。門は時代劇に出て来る「旗本の屋敷」か何かのような代物で、この前に佇むと、何となく「開門!!」等と“門番”でも呼んでみたいような気分になる…

↓これがその再現された門…
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西田橋が移築された場所が、なかなかに好い。江戸時代の石造の橋の背後に桜島が見える!!

私が訪ねた日は、午前中によく晴れていたのだが、昼頃からやや雲が多くなっていた。それでも遠くの桜島が見えていた。初めて見た光景だが…思わず口を突いたのは「銭湯の壁の画のような…」という感想である。

鹿児島と言えば…「南国の青空に映える桜島」という状況が似合いそうだが、この日のような趣も悪くはない…桜島に関しては“仙巌園”の建築群の瓦屋根が並ぶ向こうに見える、昨年出逢った風景も気に入っているが、この“西田橋”と共に在る様も素晴らしい。空の様子が変われば、光加減も変わって、ここの見え方も千変万化であろう…何時か、この日とは異なる表情にも出会ってみたい…

西田橋の傍に“記念館”が設けられている。ここの展示が非常に面白い!!ジオラマとビデオで、西田橋の建設工事の工法や様子が解説されている。加えて、公園に移設した際の、往時の工法に準じて行われた工事の状況の紹介も在る。こうした展示が愉しいのだが、この展示の図録(DVD付)が「500円」という驚くべき価格で売られている。間違いなく価格以上に価値が在ると思った。

図録は秀逸である…記念館で愉しく視た工法に関する展示の解説の外、図録に在った“現役”で利用され続けた石橋の経過を写真で説明していた頁が興味深かった。

↓これが図録だ!!
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「後世へ伝えたい!!」という強い意志の下に移設された価値在る石造の橋が据えられた公園で老若男女が寛いでいる…そして石橋に関して興味深い解説が視られる記念館まで在る…何か「先人達の遺したモノに対する畏敬と矜持、そして愛着」が感じられる場である…私としては「鹿児島のお奨め!!」に挙げたい…

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