
特捜部Q 檻の中の女
↑「何だろう?」という思いと共に出逢った作品だったが、これがなかなか愉しい小説で、読み始めると止まらなくなり、あっという間に読了してしまった。
本作はミステリー小説である。作者のユッシ・エーズラ・オールスンは1950年コペンハーゲン生まれの作家だ。これはデンマークのミステリーの翻訳である。
コペンハーゲン警察本部のカール・マーク警部補は2人の部下と共に「遺体発見」の現場を調査に出掛けたが、その現場で正体不明の人物に銃撃を受けてしまった。カール・マーク自身は、銃弾を受けて倒れ込んだ大柄な部下の下敷きになっていた関係で負傷はしなかったが、倒れ込んだ部下は重傷で深刻な後遺症が残り、もう1人は死亡してしまった。そういう気持ちが荒む状況下、彼は職場復帰するが、他の同僚達の間で浮き上がってしまっている…
そんな或る日、“新部署”を設立する話しが持ち上がり、カール・マークは上司や同僚から“厄介払い”されてしまうかのように、その部署の責任者ということに祭り上げられた…
新部署は「特捜部Q」と命名された。或る程度関心が高いものの、未解決に終始している重要事件に関する調査を行うのが「特捜部Q」の任務である。オフィスは警察本部ビルの地下に在った空きスペースが充てられた。仕事は「原則的に一人」という話しであったが、流石にそれでは困ると、アシスタントを要望し、更に「特捜部Q」専用公用車を確保した。
要望したアシスタントが現れた。シリアからデンマークに“政治亡命”で移民してきたという男、アサドだった…どういう経緯で警察本部の、カール・マークのアシスタントという仕事に就いたのか、よく判らない不思議な男で、一寸変わっている男でもあった…
「特捜部Q」が取組むことになった最初の事件…5年前に発生した女性国会議員の事件だった。フェリーで旅行に出た女性国会議員ミレーデ・ルンゴーだったが、フェリーが目的地に到着してみると、積み込んだ自分の車を残したまま姿を消していた。「フェリー航行中に海中へ転落?」と推測され、精力的な調査も行われていたが、一向に遺体は発見されない。複雑な潮流のバルト海のデンマーク近海では、事故死した遺体がなかなか発見されないという場合も在り得るというが、5年間全く発見されないというのは謎だ…無責任な噂話を含めて、色々なことが語り尽くされているものの、真相が全く判らないこの事件の謎を解き明かすことがカール・マークの仕事となった…
こうしてカール・マークは、アシスタントのアサドを従えて精力的に事情の調査を始める…女性国会議員ミレーデ・ルンゴーの身に何が起こったのか?姿を消した当時に関わりが在った人達、その関わりが在った人達の周辺、彼女自身の遠い過去を丹念に探り、真相へ繋がる“糸”を手繰り寄せる…
熱いものを秘め、執念深く手掛かりを追いながら、時に立ち止まって考える…そんな「刑事そのもの!!」なカール・マーク警部補だが、“勤め人”なりの色々な事情が在ったり、銃撃事件で深刻な後遺症を抱えてしまっている“良き友”でもある元部下との関係、「別居中の妻」に「同居中の妻の連れ子」等との関係やら、銃撃事件に巻き込まれた故の“心的外傷”関連で会うことになる女性心理士に好意を抱くことやら、随分と人間的に描かれていて面白い。また、彼を助ける「謎の男」アサドも、個性的な活躍を見せて愉しい。
本作は「カール・マークの時間」と「ミレーデ・ルンゴーの時間」とが概ね交互に綴られている。“2007年”と在ってカール・マークの動きが綴られ、やがて“2002年”となってミレーデ・ルンゴーの動きが出て来るという具合だ…当初は「何?」とも思ったのだが、途中から「これは!?」と「綴り方の意図」が見えてくる…
或いは本作は、有名なドラマの『コールドケース』を思い起こさせるのだが、あのドラマはチームで難問を解く…本作はベテラン刑事がほぼ単独で調査を進める…その辺に違いが在る…そういうような、やや個性的な設定になっているのだが、内容は“刑事モノ”、“事件モノ”の「正統派!!」だと思う…
本作は、デンマークでなかなか評判の“シリーズ”の第1作らしい…他の作品も是非読んでみたい!!
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