『ユニコーンの日』(上・下)

未来の或る時期、人類は暦を“宇宙世紀”と改め、宇宙空間に人口天体を築いてそこに移民を送り込むようになり、何世代か経た辺りで戦乱が起こり…というのは、かの『機動戦士ガンダム』の世界であるのだが…この“宇宙世紀”という世界を舞台にした物語は随分と沢山創り続けられている。

この“宇宙世紀”を舞台に創られた物語の、最も新しいシリーズが『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』ということになるであろう。

“宇宙世紀”を舞台に創られた物語は、最初のガンダムの「0079頃」、『ジオンの残光』の「0083頃」、Z(ゼータ)やZZ(ダブルゼータ)の「0087-0088頃」、『逆襲のシャア』の「0093頃」、『F91』の「0123頃」、『V』の「0153頃」等々と実に色々と在るのだが…『機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)』は「0096頃」を想定している…

こういう具合に、“ガンダム”と名が付くと、何となく「勝手に拡がって、勝手に完結している世界の、一部の愛好者に向けた作品群」という雰囲気も出てしまうような気がするが…本作は決してそういうようなものでもない。“宇宙世紀”という設定や、過去作品で描かれた出来事や人物の事績等を「作中世界での歴史」として採り入れながら、「独自に新しいSF大河ドラマという感じで世に問う」という“立ち位置”を占めることを目論んでいるようだ…

↓“大河ドラマ”的に展開する作品の「最初の2冊」を入手して、非常に愉しく読了したところである…



ユニコーンの日(上) 機動戦士ガンダムUC1





ユニコーンの日(下) 機動戦士ガンダムUC2


“ガンダム”は、メカが活躍するような場面が在るので、アニメーションなど“映像”の作品で愉しむような題材という側面が在ると思うが、“宇宙世紀”という架空の歴史を綴った作品が多数蓄積されていて、「詳しく説く」必要が在るものが多々含まれてしまっている関係上、“小説”という型で展開するのも、なかなかに善いと思う。また“小説”は、劇中人物が直面している状況に至るまでの「積み重ねられた思い」のようなものが、“映像作品”以上に表現し易く、また伝わり易い面が在るようにも思えるので、善い企画かもしれない…

本作『ユニコーンの日』は、人類が暦を“宇宙世紀”に換えることにした、その当日に不穏な事件が起こる場面から綴られている…その不穏な事件に関わった、その当時はかなり若かった男が、相当な高齢者になって改めて登場するというのが“プロローグ”となる…

“ジオン公国”が独立戦争を起こして以来、幾つもの戦いが在った“宇宙世紀”の世界…伝説的撃墜王で、著名な政治思想家の遺児であるカリスマ、“シャア・アズナブル”が率いた“ネオ・ジオン”が引き起こした紛争が終結して3年程経った頃というのが、本作の舞台だ。

未だ造成が続いている部分も含まれる工業コロニー<インダストリアル7>には、巨大企業<アナハイム・エレクトロニクス>が出資する学校、<アナハイム工専>が在り、主人公のバナージ・リンクスはそこの学生であった。

学校の寮で暮らすバナージは早朝のアルバイトに出掛けたが、バイト先の都合で仕事が休みになってしまった。そこで何となく時間を潰すことになったのだったが、彼は不思議な少女に出会った。少女は“オードリー・バーン”と名乗った。

このオードリーと出会った日…<インダストリアル7>では、幾つかの勢力の思惑がぶつかり合い、“事件”が発生してしまった…重大な秘密を収めていると伝えられる「ラプラスの箱」なるものを巡り、戦闘が発生してしまったのだ…

バナージ自身も“秘密”を有しているのだが、彼が出逢うオードリーにも何やら“秘密”が在る…そしてバナージは、<アナハイム工専>の理事長でもあり、政財界の黒幕とも言われるカーディアス・ビストと出会う…

やがて…俄かに発生した戦闘によって混乱する<インダストリアル7>で、謎のモビルスーツ<ユニコーン>が始動し、恐るべき威力を見せた…

「未読の方のお愉しみを妨げない程度に…」と相当に省略した話しで概要を綴ってみたが…本作はなかなかに重厚な感じで“宇宙世紀”世界が描写されていて、主要な人物達の物語が、その重厚な感じの世界の中で展開している。勝手に“了解事項”にしてしまったり、「くど過ぎる…」ということもなく、適切な型で「積み上げられた“作品世界”」を巧く処理している…と読了後に思った。読んでいた時は、何となく夢中になってしまい、そういう「後から批評するような事柄」は特段に気にならなかった…

既にこの小説を原案に“映像作品”も何本か在り、登場メカの模型等も見受けられるようだが…「独自に新しいSF大河ドラマという感じで世に問う」という按配の、小説で展開する“ガンダム”に偶々出逢ったが、これは当分愉しめそうだ!!

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