『遠い崖 1』

その存在はかなり以前から知っていて、何か気に掛かっていた作品ながら、何となく手を伸ばし損なっている…そういうものは意外に在るような気がする。

↓何となく思い付いて第1巻を入手して読了したその作品…随分長く気に掛かっていて、漸く手を伸ばした…

遠い崖 アーネスト・サトウ日記抄 1 旅立ち
↑全14冊という超大作の第1巻…「途中までになっても構わないから、とりあえず読んでみたい…」と思い立った次第である。

本作は幕末期に活躍した英国人外交官アーネスト・サトウの日記を軸に、彼の同僚ウィリスが遺した家族宛の手紙、彼らの上司であった公使のオールコックやパークスが遺した報告や外務省幹部宛の書簡、日本側で彼らと接した人々が残している書簡等々の“一次史料”(当事者の手による文章類)を丹念に紐解き、激動した時代を多面的に、また深く探り出すというものである。

歴史年表などには、この時代の様々な出来事がビッシリと載る訳だが、それだけでは判り難い“隙間”が多々在ると思う。本作は、そういう“隙間”を埋めてくれることが期待出来る力作だ。

アーネスト・サトウ…「Ernest Satow」と綴る。一族はバルト海沿岸の出らしい。東欧方面なら「Satow」は「サトフ」とでも読むのかもしれないが、この一族は英国に定着して以降「サトウ」と言っているそうだ…

この第1巻は、本作で扱われる日本で活躍した人達の晩年の様子等を探るべく、著者が英国などを訪ねた経過が紹介され、サトウやウィリスの出自や日本へ渡るまでが説かれている。

サトウが日本へ渡る前、彼は「とにかく漢字に馴染む必要が在る」というオールコックの意見で、中国に暫く滞在してから日本入りしている。日本では代理公使ニールの下で日本語を学びながら仕事を始めるのだが、間もなくあの生麦事件が起こってしまう…

いきなり、かなり大変な事態からサトウの日本での仕事は始まったのだ…生麦事件のような大変な事件の引き起こす波紋は第2巻に詳しい…

第1巻には英国を訪ねた経過が綴られているが、著者が英国を訪ねた時期は1970年代半ばの北アイルランド紛争が激しかった時期で、それを窺わせる描写も生々しい…

本作が、私が手にしている文庫本として登場したのは2007年であるが、これは最早「読み継がれている古典」である。「確かな手応え」を感じさせてくれる第1巻だった…

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