
永岡慶之助著/最上義光
↑“最上義光”…方々の小説やドラマに登場しているのだが…主人公ということになっている作品は記憶が無かった…なかなか興味深く読了した。
最上義光は、かの伊達政宗の伯父である。彼の妹が伊達政宗の母なのだ。ということもあり、最上義光と言えば「伊達政宗関連の物語」に色々な型で登場することが多い。
最上義光は山形城を本拠地としていて、関ヶ原合戦後は57万石の大大名となって熱心に城下町の整備を進めたという。ということで、山形では「町の礎を築いた人物」として英雄視されてもいるようだ。だが「時代モノの劇中人物」としては、それ程人気が高いとも思い悪い。故に、本作を視付けた瞬間に注目してしまったのだ…
本作を読んで思ったのは、最上義光は「シェイクスピア劇に登場する君主」のような感じの人物かもしれない、ということである。やってしまったことを肯定しようとするのだが、内面ではやってしまったことがもたらした不幸、不運を強く呪う…そんな型の“悲劇”という按配だ。
最上義光が生きた時代は、豊臣政権が全国統一を果たし、徳川幕府が成立して行った「非常に大きなうねり」の中だった。この「非常に大きなうねり」の中、最上義光が示した“生き様”は文字どおりの「なりふり構わず」であり、それがもたらしたものには「幸い」と強弁し得るものも在った他方、寧ろ「不幸かもしれない」ものが多い…なかなか悲劇的である…
山形城に拠って周辺の勢力との抗争を繰り広げていた時期には、剛勇を誇る他方で数々の謀略―「重い病気で死に掛けているから一目会いたい」と敵将を呼び寄せ、「領主の重病!!」と物々しい雰囲気の中で寝室までやって来た敵将を、布団の中に隠した刀で一刀両断に斬殺…というような「凄い!!」ことまでしている…―を駆使して争いを制したことで知られる最上義光だが、彼の悲劇は豊臣政権との関係、徳川幕府との関係の中で際立つ。豊臣政権との関係では、“後継者問題”での秀吉による秀次処断の巻き添えで、愛娘が処刑の憂き目を見る…徳川幕府との関係では、徳川家との関係造りを図って人質同然に預けていて長じた次男を後継者に据えるべく、長男を暗殺させてしまった…
最上義光は、文字どおり「なりふり構わず」というように「山形最上家57万石」を護ろうとした。その死の直前まで、「山形最上家57万石」を護ることに執念を見せて他界したが…「山形最上家57万石」が辿ったその後にも、本作では紙幅が割かれている。(家中が色々と混乱し、余り永く続かなかったのである…)
本作の“あとがき”を読むと…作者は伊達政宗を主人公に据えた作品を著しており、本作はその作品で描き切れなかった最上義光関連の挿話を描きたかったという出発点で綴られたような按配である。ということで、“ライバル”的な位置に在る伊達政宗関係に関する話しも本作には多い…それは悪くないが…個人的には、謀略を駆使して護ったり奪ったりした領地で、最上義光がどのような治世を敷いたのか、というようなことにも言及して欲しかったと思う。そういうものが在ると、「なりふり構わず」というように「山形最上家57万石」を護ろうとしたという最上義光の「行動の動機性」が強く前面に出て、更に興味深くなったのではないだろうか…
「最上義光」と聞くと、かなり以前に大好きだったドラマ『独眼竜政宗』に登場した、確か原田芳雄が演じていて、「主人公の政宗の伯父にあたるが、決して政宗が心許す訳にもいかない、野心に溢れる隣国の領主」という雰囲気を湛えた、あの渋い風貌を思い出すのだが、その人物像に関しては余り情報を持っていなかった…本作を通じて、好い出会いが在ったように思う…
この記事へのコメント