『悲鳴』

↓これも年末に入手、年明けに読了の一冊…

東直己/悲鳴
↑東直己作品の中、「探偵・畝原」のシリーズに未読作品が残っていた訳だが、年末にそれらを入手していた…その一冊である…

畝原は、「それを自覚しているのか、自覚していないのか、傍目にはよく判らない“悪意”」というものに囲まれている…或いは最近の巷というのは「そんなもの…」なのかもしれない…

畝原自身、飲み物に睡眠薬を混ぜられてしまい、気付けば小学生の少女と知らないホテルで裸になって寝ていて、そこを逮捕されてしまい、「完全な濡れ衣」であったことが明らかになっても“事件前”の人生を取り戻したでもなく、新たな人生を求めて生きているのだが…そんな彼であるからこそ、そういうものに直面して「気付くもの」が在るのかもしれないのだが…

日常業務の中に“大事件”に通じる穴のようなものが現れて、踏み込んでしまうと穴の中の“闇”が非常に深く広いことに気付かされ、それに驚愕しながら向き合う…というような展開が多い畝原が活躍するシリーズなのだが、本作もそうした型で纏まっている…

畝原は“浮気調査”という、最も有触れた仕事を引き受けた。「夫が自宅マンションで浮気相手の女を迎える場面の写真を撮ってくれ」と言う依頼人の要望に応えるべく、畝原はそのマンションの入口が見える公園のベンチに陣取って張り込みをしていた…そして彼は、“依頼人”がマンションに住む“夫”のストーカーであったことに気付かされる…

畝原は依頼人との接触を求め、同業の男が手掛かりになりそうであると思い至り、接触を図ったのだが行方がよく判らない…やがて、切断された死体の足や腕がばら撒かれるという奇怪な事件が発生し、畝原は「或いは探していた男?」との疑念を抱く…

やがて、彼が恩義を覚えている友人の一人ということになる、調査や警備を業務とする会社を営む横山の家にその死体の一部がばら撒かれてしまい、警察は横山の身柄を強引に拘束してしまった…畝原は横山の依頼を受ける型で、事件を探る…

今回は「遺体の一部が方々に撒かれているのが見付かる」という“怪事件”が、深く広い闇に通じていたという話しで、最後の方までかなり緊迫する…畝原自身も、正体がよく判らない相手から相当に悪意の篭った嫌がらせを受ける…或いは自身へ向けられた妙な嫌がらせの犯人探しという側面も帯びるのだが、これがなかなかしつこく、簡単に判らないのが不気味であったりする…本作は『悲鳴』という題名だが…終盤にその題が冠せられた理由が明らかになる…

或いは「探偵・畝原」のシリーズでは、本作が最も重厚でスリルに満ちているかもしれない…かなり分量が在る文庫本だが、読み始めると続きが気になって仕方がなくなってしまう…

この記事へのコメント

  • みいまん

    東直己さんに懲りだしてから、結構北海道出身の作家の作品に懲りだしそうな感じがしています。この前釧路駅で佐々木譲の文庫本を買って読んでいたら結構面白そうなのではまりそうな気もしてきました。
     あとは、私と同郷の作家の作品。大沢在昌さんとかそうだし、辻真先さん、宮城谷昌光さんとか。

     台湾から日本に戻る事になったときに本の処分が大変ですね。日本語を勉強する人のために、図書館かどこかの大学に寄贈しようかとも考えていたりします。
    2012年01月23日 07:03
  • DJ Charlie

    みいまんさん、札幌に立ち寄られた際に動き回っている辺りが出て来る東直己作品に着手ですか!!素晴らしい!!決して期待を裏切らないと思います!!
    佐々木譲作品ですが、私は「道警シリーズ」が秀逸だと思います。あの『笑う警官』を嚆矢とするシリーズです。
    台湾で日本語を学ぶ皆さんのために蔵書を寄附…大変善いと思います。東直己作品などは、外国の読者も愉しんで頂けるように思います。
    2012年01月23日 20:58

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