『待っていた女・渇き』

東直己作品の文庫本については、「未読のモノ」に出会すと、それを読むようにしている訳だが…

↓また出会した…
待っていた女・渇き (ハルキ文庫)
待っていた女・渇き (ハルキ文庫)
↑何やら「変なタイトル?」という気がしないでもない本書だが、『待っていた女』と『渇き』の2作品を一冊に収めているので、両作品のタイトルを並べて本書のタイトルとしているだけのことである…

本書は「探偵・畝原浩一」が登場するシリーズの最初期の作品2点を収めている。『待っていた女』は、“初出”は雑誌に掲載されたもので、分量も「文芸誌の読み切り小説」の程度である。短編と言って差し支えない分量だ。『渇き』は『待っていた女』の1年程度後ということになっている作品だ。少し分量が多い。“畝原”が本格的に躍動する、正しく「実質的なシリーズのスタート」となるような作品である。

『待っていた女』…これはシリーズに長く登場し続ける女性、姉川明美と近付くという話しである…

畝原は、新聞社を解雇され、妻に出て行かれてしまい、残された娘を一人で育てながら探偵稼業をしている。或る休日のこと、娘を預けている学童保育所の催事に参加しているのだが、そこで姉川明美と言葉を交わす。

姉川明美は娘を持つシングルマザーだが、札幌では一寸知られた“文化人”でもある。彼女は最近、脅迫状めいた手紙を毎週のように受け取っている。何か、娘に危害が加えられるような事件にでもなってしまうことを怖れている…

それを聴いた畝原は、翌日に連絡を取ることを約した。そして翌日を迎え、姉川明美を訪ねた。件の脅迫状めいた手紙を見る。その文面を読み込んで話し合った結果、彼女が出演している、スタジオ見学者も入れて生放送しているラジオ番組の周辺に、手紙の差出人が居そうであると見当を付けた…

畝原はラジオ出演する姉川明美の周辺を見張る…脅迫状めいた手紙の主を突き止めることに成功するのだが、そこで彼はおぞましいものと出会す羽目に陥ってしまう…

『渇き』…これはもっと本格的だ…『待っていた女』で、畝原の娘は小学4年生だが、『渇き』では小学5年生になっていて、作中の時間も1年程度流れていることがハッキリしている…(過日読了した最近の作品では、娘は大学生になっている…)

冒頭…何やら奇妙な場面から始まり、そこに至った妙な経過が綴られる…畝原は、匿名の男から「或る大学教授の素行調査」の依頼を受けて活動したが、その匿名の男とは?という話しである…

そんな妙な出来事の後、畝原は若い女性達から依頼を受けた。就職活動絡みで、パワハラ、セクハラに及ぶ雑誌社社長を尾行する話しである。何やら“美人局”に近いような内容も在り、気が進まなかったが、断るハッキリした理由も見出せず、畝原は依頼を受けた…

この依頼が切っ掛けで、畝原は重大な事件に巻き込まれて行く…尾行した雑誌社社長の周辺にきな臭い話しが色々と在り、新事実が次々に…

なかなかスリリングな展開だ!!

「探偵・畝原浩一」が登場するシリーズ…なかなか渋い!!このシリーズだが、「未読の文庫本」がマダマダ在る。当分、「東直己作品“熱”」というようなものは続きそうだ…

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