↓ということで、今回はこの作品である…

挑発者〈上〉 (ハルキ文庫)

挑発者〈下〉 (ハルキ文庫)
↑期待を裏切られることはなく、非常に愉しく読了した!!
東直己作品だが、“シリーズ”として綴り続けられているものが幾つも在る。そうしたシリーズでは、作中人物達の「年月を経たことによる変化」というようなものが、かなりハッキリと描かれる。或いはこういう方式が、「読者が何となく、作中人物達と“世界”を共有しているような感覚」を抱かせてくれる面も在るのかもしれない。私は非常に気に入っている。
また、複数のシリーズの作中人物達が各々の役割で登場する“クロスオーバー”というのも、東直己作品では「一寸した得意技」である。或る作品では、当該作中人物の「一人称の文」で作中人物が語られていても、別の作品では「三人称の文」で語られ、更に別な作品では「別な作中人物の一人称の文」で語られる…そうやって“世界”がどんどん広く、深くなっている…
この『挑発者』は、そうした愉しい東直己によるシリーズの一つで、「探偵・畝原浩一」が活躍する作品である。かの“ススキノ探偵シリーズ”の「俺」には、作者の青年時代が色濃く投影され、「“青年”のまま年齢を重ねた正体不明の男」という印象になっているのに対し、「探偵・畝原」には「もっと年齢を重ねた作者」が投影されている…ような印象を受ける…
これまで読んだ“探偵・畝原シリーズ”の作中で語られる畝原の歩みによれば…畝原は新聞記者であったが、大掛かりな不正を暴く取材活動中、関係者に嵌められて「未成年者に対する淫行を働いた」ということにされてしまい、新聞社を解雇されてしまった。事件に憤激した妻は娘を残して去ってしまい、離婚した。畝原は探偵事務所で働き、やがて独立した。娘を育てながら探偵を続けている…ということになる。
『挑発者』の畝原は…『熾火』で描かれた一件の後、自分の娘より1つ上の娘が居る女性と再婚し、酷い虐待を受けていた女児を養女に迎えた。畝原は、妻、大学生になった2人の娘、養女にした幼い娘という5人家族で暮らしている…という状況だ。
で、物語である…
畝原は、消費者協会関係の旧い知人の紹介で連絡してきた、札幌市内で飲食店チェーンを営む会社の専務から請け負った仕事をしている。専務の父親である社長が、自らを“エスパー”等と称し、メディアにも頻繁に露出していた男が率いるグループの詐欺に遭いそうな状態なので、何とか助けて欲しいという話しだった。
畝原は、その詐欺グループと対決するが、その一件を通じて彼を知った情報誌会社を営む男から別な依頼を受けた。情報誌会社が運営する「ホステスのミスコン」の決勝に進出した4名の女性に関する素行調査というのが依頼内容だった。畝原はそれを請け負った。
畝原は、その4人の女性の素行調査と並行して、或る主婦から請け負った、彼女の夫に関する調査も続けていた…畝原は、情報誌会社の段取りに従い、情報誌編集部関係者ということで4女性に接触するなどしていたが、他方で主婦の奇妙な振る舞いに悩まされたりもする。
そんな時、畝原は4女性の1人に会いに行った帰りに、正体不明の男に襲い掛かられ、不意打ちだったので怪我を負ってしまったという出来事が在った…更に…“エスパー”のグループによる詐欺がメディアで暴かれようとしてきた中、深刻な事態も惹起する…
という具合に物語りは進む…二転三転しながら絡み合い、解れたと見えてまた絡む事件…どういう具合に進展するのか?是非とも本書を紐解いてみていただきたいと思う。
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