
疾走 上

疾走 下
前作の『残光』から6年を経ている…本作は続編である…
何やら禍々しい感じのプロローグが在り、早速に主人公の近況が語られる…
健三は、普段は“林”と名乗り、山小屋に籠って木彫造りに勤しみ、時々谷の町に下りてきては民芸品店に品物を収めるという生活を続けている。
この6年間で、健三が時々やって来る谷の町は雰囲気が変わった。放射性廃棄物処理施設<えびす>なるものの建設を巡って色々と在ったのだが、それが既に竣工し、稼働し始めている。
健三は、札幌の“業界”では知られたヒットマンだったが、既に堅気になっていた。そして愛した女と、彼女が建設会社(丸高建設)の社員に嫁いで生まれた彼女の息子、恵太の安寧を祈りながら静かに暮らしていた。3人は札幌の社宅に住んでいる。
詩人・エッセイストで居酒屋経営という札幌からやって来た男と出くわした健三は、一緒に彼が淹れた珈琲を楽しんだ後、“みゅーじあむ”と称する<えびす>の広報を行っている施設に入った。そこで、丸高建設の札幌の社宅に住む児童生徒を中心にした見学ツアーの一行がやって来ることを偶然に知った。
健三は、女の息子のことを思い出した。『残光』の事件で小学2年生だった子どもは、既に中学生となっている筈だ。健三は頃合を見計らって、見学のバスを待ち、遠くから子どもの様子を視てみようと考えた…
健三がたまたま見つけた見学ツアーの日、丸高建設のバスは予定どおり現れた。恵太もバスに乗っていた。
バスは<えびす>へ向かった筈だが…なかなか戻って来ない…何かがおかしい…
恵太が加わった一行は<えびす>に入るには入ったのだが…何やらおかしな様子で、結局のところ見学をせずに引揚げる羽目になった。恵太は「見てはならないものを視てしまったかもしれない」という感を抱く…そしてトイレ休憩でバスが停まった際、友達の女の子と2人で密かにバスを離れた…
丸高建設社員の子ども達が乗ったバスに「トラブルが発生したのか?」という話しが伝わり始めた頃、動き始めた男が…昔、健三と縁が在った桐原だ…女の家族の様子を定期的にレポートする調査員を探すように頼まれた桐原は「持谷という探偵を頼む」という話しにしたのだったが、実は自身でやったり、自分の子分に仕事をさせていたのだった。丸高建設を巡る事件で、“林”こと健三から連絡が入る可能性を考えた。桐原は、6年前(『残光』の事件)の事例を思い起こし、“便利屋”を探す…
というようなことで…本作は「東直己ワールド」の主役、脇役が色々と入り乱れ、やや謎めいた健三が、恵太と友達の女の子の2人を連れ、危険な追手から逃れるべく奮戦する…
前作から6年を経ているということは、健三も6歳も年齢を重ねている…その辺りの描写も、なかなかに面白い…
“ネタばれ”で未読の方に御迷惑が及ばないであろう程度にストーリーに言及したが…なかなかに愉しいもので、あっという間に上下2冊を読了してしまった…
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