↓そんなことを思わせてくれる作品に出逢った…
残光
本作の主人公は“榊原健三”という…普段は“林秀和”と名乗っている…山でひっそりと彫刻をしていて、作品を麓の民芸品店に時々納めることを生業にしている…
この健三だが、実は秘密が在った…札幌のヤクザの抗争で、一方の陣営で暴れた“始末屋”だったのである…健三はヤクザの世界と縁を切り、自らの静謐な暮らしを維持することと、現在は建設会社社員の妻で子どもも居る、嘗て愛した女の平穏とを只管願っている…
その健三はテレビニュースで、嘗て愛した女が画面に映っていたのを目敏く視付けた。女は、「保育士の女性と小学生2名を人質に立て篭もる男」が居るという現場の中継に映っていた。健三は、彼女の子どもが危ないと感じ、急いで札幌に向かう…
同じ頃…桐原は永年苦楽を共にした相田が難病を患ってしまったことで、病院のことなどで難儀していたが、そんな最中に“人質立て篭もり”のニュースを視た。そして彼は健三が平穏を願う女が画面に映ったことに気付いた…
健三は、嘗ては桐原が居た陣営の人間だった…健三がその世界と縁を切って、女の平穏を願った中、定期的に女と家族の安否を伝える仕事を探偵に依頼した…実はそれをさり気なく引き受けていたのは桐原だった…桐原は、“人質立て篭もり”騒ぎの中、健三が動くこと、更に彼が頼んだ探偵に接触を図る可能性が高いことを思った…
そして…桐原は“便利屋”を使うことを思い立った…
これ以上ストーリーに言及すると“ネタばれ”になってしまうので止めておく…
本作には「ススキノの便利屋」が登場する…これは『探偵はひとりぼっち』と『探偵は吹雪の果てに』との間、若干後者に寄った時期の“俺”が出て来る。ただし、一人称の語りではなく、文章は原則三人称となっている…
危険な男である健三と、飄々とした“俺”とが行動を共にする…これは健三を主人公に据えたシリーズではあるのだが、ある意味では「ススキノの便利屋」こと“俺”が活躍するシリーズの“番外編”である…或いは、『探偵は吹雪の果てに』以降のシリーズは、本作に登場した「10年以上を経た“俺”を始めとするシリーズのレギュラー陣の様子」を出発点に書かれている…
これは「ススキノの便利屋」こと“俺”が活躍するシリーズのファンは必読かもしれない作品なのだが…東直己作品が初めての方でも愉しいと思う。
更に…本作の中で、静謐な暮らしと女の平穏を願う健三が、数年前に札幌に現れて一騒動起こしていることに言及が在るのだが…その内容を綴った作品も在るようだ…そちらも非常に気になる…
この記事へのコメント