そういうようなことは記憶の隅に在るのだが…新潟の興味深い挿話というようなものに関しては、残念ながら知識が無かった…
↓その新潟の、江戸時代に実際に在ったという驚くべき事実に依拠しながら、巧みに綴られた読み物に出逢った!!

新潟樽きぬた 明和義人口伝
↑新潟県出身の火坂雅志による、郷土の歴史に題材を求めた、読み易い分量の作品だ…
実際、一日で一気に読了してしまった…が、分量が適当だったという事由ばかりではない…何処か切ない、引き込まれる雰囲気が漂っているのだ…
江戸時代の日本では、商業や流通も発展したが、土木工事も発展した…信濃川流域では治水事業も色々と行われた…そんな事業の御蔭で、河口部に開けた新潟の港は土砂が堆積し易くなり、船の出入が不便になってしまった時期が在った…18世紀の後半である…
“北前船”が行き交う港を擁する新潟からの税収は、長岡牧野家を支える大切な財源で在ったのだが、最盛期の数分の一というような具合に船の出入が減っていた明和年間、重税が町の人々の負担になっていた…他方で、課税を免除された特権的な人達が在り、更に彼らと結託して不正を働く者も見受けられた…
こういう状況下…窮状を訴えようという人達が動くのだが…そこから大きな騒動が起こり、窮状を訴えようとした人達の指導者が、僅か2ヶ月程度ではあったというが、“住民自治”を行った経過が在るという…
本作はその明和年間の事件の顛末を、事件の指導者になった男との邂逅を大切な想い出にしている「老いた芸伎の昔語り」を入口に綴った物語だ…
“樽きぬた”とは、新潟の芸伎に伝わっていた芸で、酒樽を叩いてリズムを取るものらしい…実際、どういうものなのか少々興味も沸くのだが…本作では「主人公の男自身を含む、町の衆が町の賑わい、“らしさ”を想い起す音」というようなことを象徴している…
町の衆のために力を尽くそうとし、混乱の責任を一身に負う結果となる男と、彼を少し遠くから見詰める女…何処と無く切ないものがある…
明和年間の新潟での一寸した出来事を背景にしている作品ではあるが…町の不景気に困窮する人々の他方に、特権を享受している人達が在るという、ある種の“格差社会”という姿が、何か非常に今日的かもしれない…
多くの人に触れて頂きたい作品だ…
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