『背後の足音』

かなり気に入っているヴァランダー警部のシリーズで、新しい翻訳が登場した!!


背後の足音 上


背後の足音 下

ヴァランダー警部のシリーズ…南スウェーデン、スコーネ地方の都市イースタの警察署に勤務する犯罪捜査官達の物語だ…主役のヴァランダーは、冴えない言動も在る悩み多き40代の男である…妙に人間臭い…彼は署内のベテランとして捜査班長格に押し上げられていて、仲間達と懸命に不可解な事件の謎に挑む…

殆どの作品を読んでしまっていて、「次のもの…」を待ち望んでいたが、この7月に漸く登場した!!だが、登場時期は一寸立て込んでいたので、若干遅れてこれを入手することが叶った…

頁を繰り始めると…これが止められない!!

前作から2年程度を経ている…ヴァランダーはやや体調が優れない状態が続いている…糖尿病を患ってしまっていた…

そんな体調である中、妙な事件が気に掛かる…スウェーデンでは伝統的なミッドサマーイヴ(夏至の前夜を祝うもの)の日に出掛けた3人の若者が“行方不明”であるという話しだ…1ヶ月以上が経っても、3人の行方は判らないのだが、親の所に欧州の他国に在る都市から絵葉書が届いていた…「3人の若者が、親に事前に告げずに、勝手に旅行をしている?」とも思える状況なのだが、3人の中の1人の母親が葉書に疑念を抱いている。2人の親は強い反応はしていないのだが、母親は何度も警察に捜査をするように申し入れていた…

ヴァランダーは一件への対応を熟慮して、2人の同僚とゆっくり相談することにした。本件に携わった2人の中の1人であるマーティンソンと話し合って、最初に本件に関ったらしいスヴェードベリを交えて打合せをすることにした。が、スヴェードベリの姿が見えない…マーティンソンは留守番電話に何度かメッセージを残した…

打合せの時間になった。スヴェードベリは姿を見せない。ヴァランダーとマーティンソンは、日頃のスヴェードベリの様子を想い起し、打合せに顔を出さない状況に納得出来ない…ヴァランダーは途轍もなく嫌な予感を覚えた…

ということで…スヴェードベリを巡る話しと、不可解な若者3人の行方不明の件とが交錯し、更に事件は展開する…

本作のタイトルである「背後の足音」という表現だが…直接的には、ヴァランダーの背後に蠢く謎の犯人―これがこのシリーズの“犯人”の中では「最も不気味で不可解」な人物かもしれない…―の足音であり、“足音”が示すその人物の気配のことを示すと理解出来る…が、同時にこれは「知らぬ間に社会が抱えている、名状し難い不気味なもの」とでも言うようなもの、「気配はしてもハッキリ姿が見えない“悪意”」とでも言うようなものを暗示している…という気がした…

未だ登場して日が浅いミステリーなので、敢えて仔細は綴らない…が、次々と展開する事件の中、ヴァランダーが、色々と個人的なこと―父親の件、父親の後妻の件、想いを寄せていた女性の件、元妻の件…―も手伝って、何か“孤独”を深めるような状況下、実に懸命に事件を追う姿が非常に面白い…

私自身…作中のヴァランダーよりやや若いのだが…本作などシリーズを読んでいて、何か彼の心持が「妙に判るような…」と思えることが時々在り、思わず苦笑してしまわないでもない…

やや蛇足ながら…本作を含むシリーズの舞台となっている、スウェーデンの自然の感じが判る描写に関して、何処となく北海道の北の方を想起させるものが在り、親近感も増す…

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