残念ながら宗谷海峡の洋上は曇天である。遠景は海霧に霞み、よく見えない…
夜は日付が何時の間にか変わった中で休み、目覚めてみればやや明るくなっていた…
何時も旅行に利用する銀色のトランクに、その辺に出してあった荷物を慌しく詰め込んだ。そして朝食だ…
ホテルの朝食…美味しく沢山頂いたが…最後だ…食後に“喫煙可”のコーナーに陣取って、珈琲を頂くというのも…最後だ…
とりあえずチェックアウト…今般はホテルで多少“有料サービス”を利用している。クリーニングと電話である。が、それは利用翌日に「忘れないようにその場で支払が好い」とフロントに申し出て支払を済ませてあったので、特段に何もない。ロシアの規則で、間違いなく外国人客がやって来た旨を当局にホテルが届けて記録するようになっているらしいが、それの証明という、何やら“レシート”のようなものを渡されてお終いである。
お願いしてあった車が迎えに来てくれた…多少、忙しくなり始めた感の街を行く。ユジノサハリンスクは好天だったが、途中から霧が目立ち始め、コルサコフ周辺では曇天だった…
ユジノサハリンスク・コルサコフ間の行程…やや馴染みになった…朝の時間帯、「ユジノサハリンスク行き」は車が多い。通勤をしている人が多いようだ…「コルサコフ行き」の側は然程でもない…
コルサコフ港で手続を済ませて乗船した訳だが…今回は三十数名の乗船というようなことで、船内は空いている…
甲板で、サハリンで愛用していたイヤホンのFMラジオを引っ張り出し、聴いてみる…「殆ど音楽!!」という局が幾つも在って、サハリンのラジオは意外に好きだ。「サハリンの」というよりも、ロシア全土で流れている番組も多いようだが…
曲名やアーティスト名は知らない作品だったが…フェリー<アインス宗谷>の繋留策が巻き上げられ、ゆっくりと離岸する辺りにラジオで流れていた音楽が妙に好かった…作業の音…業務連絡のマイクを通した“曇った声”…これも多少馴染んだ様子ではあるが、何か見ていると独特な感慨も沸き起こる…
やがてイヤホンを使っていることに少々疲れ、何となく自動販売機でジュースを求めてみるなどして、船内をふらふらとする…
巨大なLNG船さえも遠くに霞む、「白い」状態だが、寒くはない。昨日までのユジノサハリンスク市内は、半袖Tシャツでも暑い状態だったが、今朝のコルサコフや海の上は「もう一枚…」というような按配である…
真昼間に航行している訳だが、何か「白夜の国の深夜帯の航海」を想像させるような…実に静かな状況である…
何やら見掛けたことの在る方に出くわした。サハリンと北海道内とを往来して仕事をされている、サハリンの方なのだが…このビジネスマン氏と挨拶を交わした後、先方の私への問いが…「何をなさっているんですか?」である…「この船で稚内へ戻っているのです…」という話ししかない…
やがてそのビジネスマン氏は…日本へ上陸・入国する外国人に求められるカードを抱えて、彼の娘のような年恰好の女性と共に現れた。女性の方は、パスポート数冊と、カード書式を何枚も持っている。その方は何度もフェリーでコルサコフ・稚内を往来しているので、些か馴れていて「これはこういう具合に書く訳だ…」と女性に向かって得意気に言い始めた…女性は、何か非常に珍しいものでも視るような様子だ…
そしてそのビジネスマン氏は…「彼女はね…家族で旅行にという訳で船に乗っている…」と始まった…「そうでしたか…」と聞いていると、ビジネスマン氏は女性に向かって…「君…もし判らないことが在ったら…彼に教えてもらいなさい…」と私を示す…「えっ?私ですか??」という按配だが…
その女性は、私に「“日本国内連絡先”なる欄に何を書く?」と尋ねる…それは宿泊するホテルの名前や電話番号を書いておけばよい欄だ…それを伝えた…そして、パスポートを見てロシア語アルファベットではなく、ローマ字で記載するように伝えた。彼女は肯いて、作業に掛かろうとする…
ビジネスマン氏は、持って来たペンで、何やらカードを一生懸命書いている…他方、女性の方は筆記用具を持っていなかった…私は、持っていたボールペンを貸してあげた…高校生位の年恰好にも、大人にも見えるような、不思議な感じの女性だったが、私のペンを手にカードに取り掛かり始めた…
ビジネスマン氏は何時の間にか行ってしまった…女性は、何度か書き損じてカード書式を丸めながら、恐らく同行している御一家の面々の分、カードを書いていた。やや在って、安堵の微笑を浮かべ、私にペンを戻して自分達の場所に戻って行った…
海は凄く静かだ…何か、海水が粘性を帯びていて、その中をフェリーが滑るようである…SF『銀河英雄伝説』に出て来る「宇宙要塞の表面を覆う流体金属」というようなものを思い浮かべる…船は…揺れない…やや荒い道を行く車やバスの方が…或いは電車の方が余程揺れるのではないだろうか…只管に、静かな海が眼前を流れる…だが、遠景は深い霧に包まれて何も見えない…
出航が若干だけ遅れ、到着もその分という中、霧の彼方に宗谷の陸地が判るようになった…もう30分位で稚内港に到着か?E-mobileを試す…ネットが繋がった!!!
それにしても…静かな航海だった…
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この記事へのコメント
玄柊
DJ Charlie
アレクサンドロフスクと旭川…そうですね。丁度、ユジノサハリンスクに居た私の頭上を越えたやり取りでしたね…1回の訪問を通して、長く続くやり取りをなさっている!!素晴らしいことです!!
実は近く…「また…」という話しにもなっていて…週明けは忙しくなりそうです…