『愚か者の盟約』

何か最近は「“政権交代”というものをとりあえず経験するにはしたが…」というような問い掛けから始まって、“政治”というものに関心が高まっている…のかもしれないし、逆に白けているのかもしれない…

そういう問題意識が沸き上がったのだが、丁度そこになかなか面白い小説に出くわした…

↓こういう作品である…

愚か者の盟約

これは“政治”の世界を扱っていて、一部に実在の著名な政治家の登場も見受けられるが、「(フィクションの)代議士と秘書との二人三脚で歩むキャリア、そして本人達と周辺の人々のドラマ」という体裁の作品である。

北海道の室蘭…ここを選挙区としていた社会党代議士の寺久保が逝去し、彼の息子が立候補して当選した。寺久保(二代目)は、若い弁護士で社会党の“カラー”が薄く、なかなかの人気者であった。

この寺久保の秘書として、党は野崎を送り込んだ。野崎はかなり若い頃からの活動家で、言わば「党が送り込んだ“目付け役”」ではあった。しかし、野崎は寧ろ「寺久保の“裏”を全て取り仕切り、寺久保が桧舞台に上ること」を目指す。野崎と寺久保は、言わば“盟友”として政治の世界を駆ける…

というような物語である。本作は1993年に最初の文庫本が登場しているということで、90年代初頭までの時代が扱われている。飽くまで“フィクション”ではありながらも、野崎と寺久保が駆けた70年代、80年代が実にリアルに描かれ、なかなか興味深い。また、彼らの公務や私事に関する物語も愉しい…

本作の頁を繰っていると、「その時代の少年」だった記憶、何かで読んだことなどが次々に頭の中で溢れ出し、物語と溶け合うような感であった。なかなか面白い作品であると思う。

本作に出て来る政党の“カラー”のようなもの…今となっては随分と勢力図や団体の呼称が変わっている現実の政治の世界と照らし合わせても、「こういう感じの人達…居るかもしれないな…」と思わせてくれるものが在る…

本作は、佐々木譲による「比較的初期の作品」という分類になるらしい…実際、概ね20年も前の作品だが…旧さを感じさせない!!逆に、20年程前までの様子を反映させているからこそ、「今の問題」が浮かび上がるような感じさえする…

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