『巡査の休日』

5月も残り僅かであるにも拘らず、稚内は“熱燗日和”である…実際、徳利1本の熱燗を用意して頂いたところだ…

通常、この時季は熱燗よりも冷酒やビールが似合うようになっているものだが…

残り少ない5月が過ぎ、6月ともなれば…北海道では「よさこいソーラン祭」が随分と話題になる…個人的には然程高い関心を寄せているのでもないのだが、とにかく賑やかな状況になるのだ…

その「よさこいソーラン祭」について…存外に詳しい描写が為されている小説が在る…高い関心を寄せているでもない私でも、小説を読んで“あらまし”が何となく判った程に詳しい…

↓この作品だ!!

巡査の休日
↑なかなかに面白い!!

『巡査の休日』は、『笑う警官』に始まる“道警シリーズ”の第4作である。前作の『警官の紋章』から1年程を経た時期を舞台としている…

本作の最初の辺り、“プロローグ”では前作の後日譚が綴られている…

前作の『警官の紋章』の冒頭の辺りで、小島刑事が「実は強姦殺人の容疑者だった」というストーカーを逮捕する場面で活躍した経過が出て来る…彼女は暴漢を制するべく迷わず発砲した…銃弾で傷を負った容疑者・鎌田は、急報を受けて飛び込んだ警官達と掴み合いの乱闘を演じた…その負傷のため、容疑者・鎌田はとりあえず病院に収容される。が、彼は病院から脱走してしまう。そして、サミット警備で警官が溢れていた札幌から姿を眩ませてしまったのだ…それから、その行方が掴めないままに時間が経過した…

小島刑事は児童虐待の家に乗り込んで子どもを保護する役目等を果たして活躍していたのだが、彼女のところに相談が寄せられた。ストーカーの経過以来、時々連絡を取るようになり、姉のように話しを聞くなどし、プライベートで付き合いの在るようになった元被害者の女性からの相談だった。彼女の所に「脅迫?」というメールが舞い込んだのだった。小島刑事は「容疑者・鎌田が遂げられなかった想いを遂げるべく舞い戻った」という展開を危惧するのだった。

津久見刑事は、容疑者・鎌田が起こした“強姦殺人”の捜査本部に配属されていた。名目的には“捜査本部”が設置されている帯広署の所属となったが、札幌で活動していた。彼らの元に、神奈川県で発生した強盗事件の遺留品から、容疑者・鎌田の痕跡が見付かったという情報が寄せられた。津久見刑事は、コンビを組んでいる渡辺刑事と共に、聴取前に病院から脱走した容疑者・鎌田に関する情報を洗い直そうと動き出す。

佐伯刑事は、部下の新宮刑事と共に連続引ったくり事件を追っていたが、他方で「でっち上げ?」という疑惑の残る盗難車密輸出事件を調査したり、新たな証拠に基づく再審請求の行方を見守るなどしていた…

折から、札幌は「よさこいソーラン祭」の季節に入った。警察が最も多忙になる時季でもあった…この時季は、小説の描写にも在るが、様々なイベントが組まれる。北海道、殊に札幌辺りでは「最も好い時季」と考えられているような季節でもあるのだ…

小島刑事は女性の警備に着手する。女性は、ストーカー事件当時の仕事であった風俗関係の仕事を辞め、美容学校に通っていた。その彼女は「よさこいソーラン祭」のチームに参加しており、非常に熱心に活動していた。約100人のメンバーの先頭で踊るのが役目であった…危険この上ない容疑者・鎌田の登場を危惧する小島刑事は、警備対象の女性に対して祭への出場を見合わせるように勧めるが、女性や仲間達はそれを頑なに拒む。拒むのは、前年の祭の後から約1年間に亘る懸命な練習が無為になってしまうからに他ならない…

祭に情熱を注ぐ警備対象の女性本人、その仲間達の希望を叶え、加えて危険な容疑者による襲撃に備えるには…小島刑事は思いがけない手段に出る…

他方、佐伯刑事は“話せる上司”である伊藤課長の言に耳を傾け、ある決断をするに至る…

津久見刑事は容疑者・鎌田の足跡を求めて、鎌田の郷里である宮城県に飛び、更に神奈川県に向かう…

こういう具合で、「よさこいソーラン祭」の時季を背景に、重層的に展開するのが本作である。祭の華やぎの中、姿が見えない脅迫者との対峙という小島刑事が動く場面が多いのだが、サミット絡みの厳戒警備を巧みにすり抜けた容疑者を執念深く追う津久見刑事の活躍も面白く、やや重い決断に至る佐伯刑事の動きや、存外な活躍を見せる新宮刑事の動きもなかなかに読ませる…

或いは…「よさこいソーラン祭」の時季なので、なかなかにタイムリーな一冊かもしれない…文庫本は登場から未だ日が浅い…

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