『警官の紋章』

『笑う警官』に端を発するシリーズ…

↓第3作である…

警官の紋章

このシリーズは「“刑事マルティン・ベック”のような警察モノのシリーズは如何か?」という具合に出版社から作者に提案が在り、折から世間を揺るがせていた北海道警察の“裏金”やら“違法捜査”という状況も在り、作者が着手したという経過が在ったらしい。この第3作辺りになると、出版社が名前を挙げたという“マルティン・ベック”や、同じスウェーデンでそれと並び称されている“クルト・ヴァランダー”のシリーズのような、様々な捜査関係者や事件関係者が登場して、ある程度重層的に展開する物語が収斂していくような雰囲気が濃くなっている…

『警官の紋章』…主人公格なのは3人の刑事だ…何処と無く文化人風な風貌で、読みが深く、執念深く捜査を続けるクールな感じの佐伯刑事…“百条委員会”の証言を引き受けるというような、熱いモノを秘めた、多分渋くてカッコウ良い津久見刑事…剣道が得意で逮捕術や射撃にも優れ、パソコンも得意な女性の小島刑事…この3人である…これに佐伯刑事のたった一人の部下ということになり、「僕にも手伝わせてください」と熱血ぶりを見せる若い新宮刑事がレギュラー出演していて、様々な捜査関係者や事件関係者が出て来る…

『警官の紋章』の物語は、『笑う警官』の頃から2年程度を経ている…

小島刑事はストーカー被害に悩む女性の警護をしていた。問題のストーカーは、警察が追っている強姦殺人の容疑者でもあるということが判明して緊迫していた。女性のアパートにその男が侵入した時、小島刑事は見事な手際で彼を取り押さえる…

そんな功績が関係者の眼を引き、小島刑事は洞爺湖サミットの要人警護班の支援要員となった。“サミット担当”ということになっている女性大臣が札幌にやって来ることになっていたので、東京から来ていた大臣の警護担当者と共に彼女が動き回る場所の下見をしていると、津久見刑事が現れた。

津久見刑事は、前作の監察官がやって来た時の一件の後、警察学校の教官ということになっていたが、「サミット警備の“遊軍”」ということで警務部に急遽配属された。下見をしている大臣警備担当の案内役―公用車の運転―を命じられて、現場で小島刑事と出くわした…

ところが…「交代を送るから、直ぐ戻って来い」と津久見刑事は呼び出された…

佐伯刑事は…「サミット警備関係で、留置所に余裕を持たせる」という本音の故に「微罪の容疑者を積極的に逮捕してくるには及ばない」という話しの中で、何となく暇だったのだが…名古屋の刑事に重要な事実かもしれないことを仄めかされた…『笑う警官』の冒頭辺りに出て来るが、彼が追っていた盗難車密輸出事件の容疑者は“デッチ上げ事件”のために動いていたかもしれないというのである…名古屋の刑事の話しを受け、佐伯刑事は中途半端な型になってしまった盗難車の件を独自に調べ始める…

津久見刑事が呼び出されたのは、北見で発生した非常事態に関連することだった。交番で勤務中だった若い警察官が、制服を着て拳銃を持ったままの状況で姿を消してしまったというのだ…津久見は警務部のベテラン長谷川と組んで、その姿を消した若い警察官を探し出す任務に当る…

佐伯刑事は、2年前の事件を独自に調べる中、違法活動で警察官が逮捕された事件の公判の際、証人として呼ばれていた警察官が“踏み切り事故”で他界していたことを知る。更に、その他界した警察官の息子も警察官であり、その彼が北見で姿を消した人物であることも知る…

小島刑事、津久見刑事、佐伯刑事の各々の動きが物語のクライマックスで収斂するのだが、非常にスリリングだ!!或いは…映画化された『笑う警官』以上に、「映画の原案向け」かもしれない…

非常に愉しい作品だった!!

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