↓この作品である!!
タンゴステップ 上
タンゴステップ 下
↑重厚な作品世界!!一寸引き込まれてしまう…
この作品は、冒頭に1945年の欧州の様子を描いた短いプロローグが在る…
当時、「戦犯の処断」が行われていた訳だが、それを行っている中の一人が、「主客転倒」という“イフ”が在ったとしても、少しもおかしくなかったかもしれないということに思い至っている…
そういう“戦犯”絡みの物語であることが冒頭に暗示されるので、物語を紐解きながら、出て来る“謎”について「これは、あれか??」と色々推定出来てしまう面も在る…
そういうことなら、“謎解き”という側面が面白くないと思われてしまうかもしれないが、本作の興味はそういう部分に止まらないのではないかと思う…
本作は、作中人物達が発生する事態に対応しながらも、身に降り掛かっている様々な状況の中で「自身との対話」のようなものを繰り返している。それが積み重ねられている辺りが、「全体に漂う重厚な空気感」を醸し出しているように思う。更に、やや大袈裟かもしれないが、“エンターテイメント”である“ミステリー小説”が「“文学”に昇華」という姿を示すのが本作…かもしれない…そんなことさえ思わせるものが在る…
本作の舞台は、晩秋から冬にかけての、スウェーデン北部となっている。ヘリェダーレンと呼ばれる地域だ…なかなかに寒さも厳しい内陸部だ…
この地域…50kmや100kmの距離を、車で飛ばすというようなことが「当たり前」となっている、「山林の隙間に小さめな町や村が点在している」ような地域である…作中には随所に、「美しくも寒い北の山林」を、同時に「過疎地での暮らしぶり」を想起させる描写が見受けられる…
この作品の舞台となっている地域だが、或いは我々が“宗谷管内”と呼んでいる、北海道の北の方にも相通じるかもしれない…道内では、この辺りばかりではなく、そういう按配の場所は多々在るのだが…そういう設定の御蔭で、何か妙に作中世界に入り込む感じで本作を読み進めた…
本作の主人公はステファン・リンドマンという男で、彼は主な舞台となっている地域よりもかなり南の、人口10万人程度の都市で刑事をやっている。
このリンドマン…具合が悪いので医者に掛かると、“舌癌”であることが判明してしまった…放射線治療などを開始するまでの期間、不意に時間が出来てしまうのである…
こんなリンドマンが本作の主人公に浮上するのは、彼が“普段の暮らし”に「居た堪れなさ」を感じて耐えられなくなり、旅をするからなのである…
リンドマンの登場に先駆けて、ヘリェダーレンで“事件”は発生する。森の中の一軒家で、人目を避けるかのようにひっそりと暮らしていた老人が惨殺された…床には惨殺された老人の血で不思議な足跡が在った。これが、ダンスのタンゴの基本ステップだったのである…(故に本作の邦題は『タンゴステップ』となったのであろうが…)
リンドマンは事件の報道に触れた。そして、殺害された老人というのは、警察で一緒に仕事をした先輩であり、退職後に何処かへ転居して特段に連絡が無かった人物であることに気付く。個人的な親交が在った訳でもなかったが、リンドマンはこの老人の死に興味を禁じ得なかった…
こうしてリンドマンはヘリェダーレンを訪ね、独自に、また同時に事件の捜査を進める地元の刑事達と協力し、老人の殺害事件と向き合う…更に、彼は自らの病気のことや、それまでの自分の人生とも向き合う…老人の詳しい素性を調べる中、リンドマンは自分の家族の秘密をも知ることになる…
という物語であるが、なかなかに読ませた…孤独な老人の殺害が引き金に、事件は「妙な拡がり」を見せ始め、捜査も若干混迷し、リンドマンの冒険を通じて絡んだ糸が解かれていく…
思いも掛けずに時間が出来たリンドマンは、「身に降り掛かった病故に」というのも勿論大きいが、人生の或る時点で期せずして“熟考”をすることになる…
或いは誰もが“リンドマン”になる可能性が在るのかも知れない…そんなことを思って本のページを閉じた…
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