『白い雌ライオン』

過日読了した『リガの犬たち』は、“クルト・ヴァランダー警部シリーズ”の第2作だった…

↓気に入ったので「シリーズの他作品…」ということで入手してみた…

白い雌ライオン
↑これがシリーズ第3作である…

シリーズとは言っても、各作品が各々独立した物語なので、何処からでも愉しめるようになっていると思う。

主人公のクルト・ヴァランダー警部は、スウェーデン南部のスコーネ地方に在るイースタ(※作中の標記を尊重する。一般的にはイースタッドと標記されることの方が多いようだ。スウェーデン語で“Ystad”と綴る。)で働いている。シリーズの主な舞台は、同地の警察の管轄区域であるイースタの街とその近郊である。

本作『白い雌ライオン』もイースタで物語が始まる。本作で描かれる一件の時季は4月末から5月で、最終盤に6月の話しが入る…

ヴァランダー警部は、失踪人の届出を受ける…

不動産業を営む夫妻の妻の方が、「家を売りたい」という連絡を受けて物件の下見に郊外へ出掛けた。金曜日の午後であった。「夕方5時頃に戻る」という旨の留守番電話を残したまま、その日は戻らず、週末が過ぎた…

「3日も戻らないのは考え難い」と夫は不安顔で訴える。

未だ幼い2人の娘も居て、家庭も円満で、仕事でも大きな問題が無い中で、この女性が行方を眩ませてしまうのは不思議なことである…調べてみれば、調べてみる程に“不思議”が募る…

ヴァランダー警部は調査を進める中で“事件性”を感じ取っていた…次第に彼女の捜索は規模を拡大していった。

足取りが途絶えた郊外の民家の周辺では、警察関係者に加えて、協力を求めた軍隊の人出が大勢出て、懸命の捜索が行われた…

懸命の捜索が続けられる中、突然、近くの民家が爆発炎上した…異常な事態だ…

突如爆発した民家の現場、或いは周辺を捜索すると、更に妙なことになった。現場から「黒い肌の指」が発見され、更にロシア製の高性能無線機、南アフリカ製の拳銃が在ったことが判明したのである。

“南アフリカ”に“ロシア”…突如として話しが難解になってしまった…話しの起こりである、失踪してしまった女性はどうしたか?そして、民家が爆発した現場から発見された“南アフリカ”やら“ロシア”やらが意味するものは何か?切り落とされてしまったらしい、黒い指の主は何者なのか?

ということで展開して行くのが本作の物語である…

本作は、何か“警察モノ”と“国際謀略モノ”が合わさったような、不思議な魅力、或いは“引力”を帯びた作品に仕上がっていると思う。ページを繰り出すと、停まらなくなってしまう…

本作の物語は1992年と設定されている。南アフリカで、かの“アパルトヘイト”(人種隔離)が完全に放棄され、黒人であるマンデラ大統領が選任される少し前の時期に当る。その南アフリカが鍵になっていることから、本格的に物語が始まる前に、南アフリカで隠然たる影響力を持っていたという“結社”に纏わる話しのプロローグも在る…

ヴァランダー警部が働くイースタの管轄区域とは縁が深いでもない“謀略”が、「女性の失踪」という事件を切っ掛けにヴァランダー警部の身に降りかかる災厄となっていく…何か凄い展開である…

「小さな街で働いている普通の警察官」であって、「色々なことに悩む中年男」であるヴァランダー警部が、持ち得る知恵を振り絞り、身体も張って奮戦している本作…なかなか愉しませてくれる!!

本作では、ヴァランダー警部の前に色々な人物が現れる。不思議な人物であったり、彼と激突する悪漢であったりするのだが、そうした人物達の描写がそれぞれに好きだ!!

『リガの犬たち』では、「ラトヴィアへ飛ぶ」という展開も在った…今回はそういうのは無い…事件の謎を追う過程でストックホルムへ出張する場面が在る…ストックホルムで色々と在るのだが…このヴァランダー警部シリーズでストックホルムと言えば、警部の娘のリンダが学生をやっている街である。この作品では、リンダも存在感が大きいかもしれない…

本作のラストは、「受容れられるもの」ではあるが…それでもシリーズの次の作品等が気になってしまう…何時の間にか、“ヴァランダー警部”も私にとって「多少馴染みのキャラクター」となっている…

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