『死刑囚』

『制裁』『ボックス21』のアンデシュ ルースルンド、ベリエ ヘルストレムのコンビによる作品が他にも出ていることを知り、早速入手してみた。シリーズの第3作ということになる…

↓これがその作品である…
死刑囚 (RHブックス・プラス)
アンデシュ・ルースルンド/死刑囚 Rhブックス・プラス
↑なかなか夢中になり、直ぐに読了してしまった…

今回の物語は1月のストックホルムが主な舞台になっている。敢えて“主な”としてみたのは、大西洋の向こうでのお話しも在るからだ…

フィンランドからストックホルムへのフェリー…バンド演奏が行われるダンスホールも設けられている大きな船だ…

このダンスホールに、痴漢のようなことをしている酔った男性客の姿が在った。そんな様子をステージ上から視ていたバンドマンの一人が男の様に憤激した。憤激した男は、酔った客を蹴飛ばし、大怪我を負わせてしまった…

負傷した酔った客の側から、警察に被害届が出された。バンドマンは直ぐに逮捕された…逮捕された男は、拘置所で激しい閉所恐怖症と見受けられる反応を見せた…

逮捕された男はカナダ国籍のジョン・シュルツと言った…パスポートを調べてみると、非常に精巧では在ったが、偽造であるらしいことが判明した…

このことから、何処かの国で前科を持つ外国人であろうと推定され、調査が続けられた。すると…この男が米国オハイオ州の刑務所で、刑の執行を前に獄中で病死してしまった男、ジョン・フライであるらしいことが判明したのだった…

ジョン・フライが獄中で病死したのは6年前だった。「6年前に死んでいる男が重傷害の容疑で逮捕」という奇怪な事態が発生してしまったのである…

ということで展開する物語である…「6年前に死んだ筈の男が生きている」という事態が如何に発生したのかが解き明かされ、そして“死刑囚”のジョンが辿る運命が描かれる…

この奇怪な事件に向き合うのは、ストックホルム警察のグレーンス警部の捜査班である。シリーズの読者にはお馴染みになっている、相棒のスヴェン・スンドクヴィストに加え、『ボックス21』の事件で登場した若い女性刑事マリアナ・ヘルマンソンがチームに加わっている。グレーンス警部とは折り合いが余り好くないオーゲスタムも出て来る…

この作品は“死刑制度”というものに関して考える内容にもなっている。

本作の原題は『エドワード・フィニガンの救済』という。“救済”という表現には“補償”というような意味合いも含むのだそうだ…エドワード・フィニガンとは、ジョンが死刑判決を受けた殺人事件の被害者遺族で、死刑執行だけを願っていた男である…州知事の友人で、知事顧問官という州政府の要職にある人物でもある。この人物が辿る経過も、本作のポイントである。

「死を以って償うべきである」という考え方に対して、「殺すことはいけない」という考え方…これは米国での考え方に対して、スウェーデン等の欧州諸国の考え方ということにもなる…

本作で印象に残るのは、「5歳の息子を残して死刑になる」というジョンの運命に関して、自らも小学生の息子の父親であるスンドクヴィストが思い悩む場面である…

更に…新加入のヘルマンソンがグレーンス警部を理解しようと外に連れ出すなどし、グレーンス警部の人物像が掘り下げられるのも本作のポイントかもしれない…

残念ながら日本語版は未だ登場していないが、アンデシュ ルースルンド、ベリエ ヘルストレムのコンビによる作品は更に2作在るようだ…

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