「カッコウ良い!!」と思える基準…明確なものは無いのだが、拙作ブログの読者諸賢であれば、私が反応するものとして“紀行”、“鉄道”というようなものが在ることに思い当たると思う…
↓正しくその“鉄道”の範疇のタイトルが冠せられた一冊を見付けて入手し、興味深く読了した。

寝台特急黄色い矢 作品集「青い火影」 2
“黄色い矢”と聞いて、「ロシアの夜行列車」と直ぐに想起した。残念ながら乗車した経過は無いのだが、ロシアには“赤い矢”という有名な列車も在る。モスクワ・ペテルブルグ間の夜行列車だ…本作の作者も、その“赤い矢”を意識して“黄色い矢”という題名を考えたのかもしれない…ロシアでの“赤い矢”という列車名だが、日本で言えば“ひかり”とか“こだま”に匹敵するか、それ以上に有名なものかもしれない…
本書の題名だが、“黄色い矢”で「ロシアの夜行列車」と直ぐに想起する読者は多数派とは言い難いため、敢えて原題には無い“寝台特急”という表現を加えたようだ…(これは後から解ったことだが…)
特段に予備知識は無いまま、とりあえず本の目次を開いた…7つの題名が並んでいる…
これを見て、長めな小説の“章”とか“節”に冠せられた呼称かと思ったのだが、それは誤解であった…本書は7本の短編を収めた作品集だった…
という訳で、7本を順次読んだ…各編、それぞれになかなか深遠な感じがした…幾つか挙げておきたい…
『幼年時代の存在論』は、少年の日の何となく寝苦しかった夜中、または早朝に考えていたような漠然としていた事柄に“大人目線”で“型”を与えているような雰囲気が在る。しかし…或いはこれは、幼年期以来、永きに亘って抱き続けるような感覚を綴っているのかもしれない…
『ニカ』という作品は「“私”が同居している不思議な魅力を持つ女性に関する叙述」という体裁になった作品だ…序盤辺りで「“ニカ”とは何者か?」という疑問が沸き起こるのだが、途中で「もしかすると?」と思わせる箇所が在り、最後にそれは明らかになる。“ニカ”に関する、少々官能的な描写が好い…
『水晶の世界』は革命期の混乱を背景にした小編で、麻薬を服用しながら歩哨に立つ若い兵士の物語だ…
『ミドルゲーム』は1990年代初め頃の雰囲気が色濃く出ている作品だと思ったのだが、読んでいて「えっ??そういうこと!?」と多少驚かせられるものが在った…
そして『寝台特急 黄色い矢』である。冒頭部の「やや草臥れた感じの、延々と走り続けているかのような、ロシアの夜行列車の朝」というのに引き込まれるものがある。やがて…この“夜行列車”というのが、“人生”や“社会”を暗示するような「ファンタジーの舞台」となっていることに思い至る…
本書の各作品だが、発表されてからそれなりに年月を経た作品であるようだ。それ故に、「発表当時に帯びていたであろう“時代性”」とでもいうような興味は薄まってしまっているのかもしれない。が、他方で「確かに在った一時期を思い出させてくれる」というような、独特な味わいが在るような気もする。何か不思議な読後感だ…私自身の場合、「1990年代初め頃のロシア」に関して「微妙な“当事者意識”のようなもの」を抱えてしまっているが故にこうした感覚を抱くのかもしれないが…
考えてみると、この種の翻訳作品に触れたのは、随分と久し振りなように思う。機会が在れば、また見付けてみたい…
この記事へのコメント
玄柊
DJ Charlie
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