『夏草の賦』―長曾我部元親の生涯…

過日読了の『戦雲の夢』の主人公は長曾我部盛親だった。その先代であり、四国統一を目指していた長曾我部元親を主人公とする作品が在ることを知った…

↓なかなか愉しく読了した!!
夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)
夏草の賦 [新装版] 上 (文春文庫)
夏草の賦 [新装版] 下 (文春文庫)
夏草の賦 [新装版] 下 (文春文庫)

本作の最初の方は、若干意表を突かれた…物語が岐阜城下から始まるのである…長曾我部元親は土佐の人なのだが…

実は、長曾我部元親は織田信長家中の女性を正室に迎えることを企図し、明智光秀の家老、斎藤内蔵助の妹を迎えるのである…物語はその辺りから起こる…

以降、本作はこの元親の生涯を描くのだが、なかなか劇的だ…土佐七郡の統一を成し遂げ、やがて阿波や伊予に討って出る…四国の統一が成りそうな辺りで、時代は大きく動く…やがて豊富秀吉政権の中に組み込まれる…

この大きな流れの中、岐阜から迎えた妻や、息子の信親が意外に大きな役割を担う…これが存外面白い。

元親の時代、“土佐”は東海地方や近畿地方とは違う発展段階に在った…日本国内の“地方”が在る程度均質化するのは豊富秀吉の時代以降ということだが、そういう辺りの描写も興味深い…

元親の後継者となる筈だった信親だが、豊富秀吉時代の九州侵攻に従軍し、討死してしまう…その様が壮絶だ…700人程度の陣営が悉く討死するという、その時点までの歴史上、最も凄惨な負け様である…

その討死に至るまでの様子…何か考えさせられた…「勝てるように」、「勝てずとも、大被害を被らないように」という元親の正論は退けられ、「上のウケが良いように」という凡庸な軍監の論が採られ、大損害を被る戦いをしてしまったのである。何か非常に気持ちに引っ掛かった場面である…

元親は、「四国統一から天下」という野望を諦めざるを得なかった…約20年間、領内の農業生産を省みることも侭ならずに戦いを続け、そして諦めを強いられたことで、何か精気を失ったような状態になる。そこに息子の討死…結局、長曾我部は“政治”に乗り遅れ、やがて後継者の盛親の時代に多くが失われてしまう…

「戦国大名の長曾我部」というものに関して、実を言えば「名前を聞いたことがあった」というだけで、余り知らなかったのだが、本作と『戦雲の夢』で色々なことを知った…

この記事へのコメント

  • 玄柊

    3月に大阪の司馬記念館へ行った私としては、司馬作品の紹介はうれしいです。しかし、司馬作品でもいまだ読んでいないものがあることに呆然とします。
    今晩は、たった一つTV番組で見ている「竜馬伝」の薩長同盟部分を見ました。事実は違うところがあるように思いますが、脚本と演出にうなりました。
    昨年、稚内でお会いしてから間もなく一年ですね。
    2010年08月29日 20:06
  • DJ Charlie

    玄柊さん、たまたま司馬遼太郎作品が続きました…「こんなのが在ったのか…」というのが次々と見付かります…
    大坂の記念館!!非常に面白そうです…
    2010年08月30日 06:44

この記事へのトラックバック