『尻啖え孫市』―痛快!!“雑賀孫市”の闘い…

↓読み始めると停まらなくなり、凄い勢いで読了してしまった作品を御紹介したい…
尻啖え孫市 新装版(上) (角川文庫)
尻啖え孫市 新装版(上) (角川文庫)
尻啖え孫市 新装版(下) (角川文庫)
尻啖え孫市 新装版(下) (角川文庫)
↑タイトルの「尻啖え」(しりくらえ)は、対峙する敵に対して「貴様如きには断じて屈しない!!」という含意で相手を罵倒する際に発する啖呵である。古代の日本と朝鮮半島の戦での挿話に起源が在るものなのだそうだ…

本作の主人公は“雑賀孫市”(さいかまごいち)である。戦国時代、現在の和歌山市辺りに勢力を有していた豪族である。“雑賀衆”は、鉄砲や海運というような技術に優れ、戦国時代は“傭兵隊”として活躍した…

“雑賀孫市”という人物だが、実は時代小説の作者が想像の翼を羽ばたかせる余地が随分と大きい人物であるようだ…本作では、各地に小勢力が割拠していた“中世的様相”の終末というような時期に、そんな様相を体現したような人物として“雑賀孫市”は描かれる。そして、その様子は少々可笑しい面さえ在り、なかなか愉しいのである。

“雑賀衆”の武力が最も威力を発揮したと伝えられるのは“石山合戦”だ。今日の大阪城の辺りに一向宗の総本山である石山本願寺が在った…その地で足掛け10年に及ぶ織田信長勢と本願寺の闘いが繰り広げられた…雑賀孫市が率いる“雑賀衆”は本願寺に入り、次々とやって来る信長勢を退け続けるのである。結局彼らは連戦連勝で合戦には敗れていないのだが、“反信長同盟”と呼ぶべき各地の勢力が綻ぶ中で本願寺側と信長側が和睦に至り、表舞台から退場する…

本作の孫市は、「清水寺で見掛けた素晴らしく美しい足の女性」を求め、その女性が「織田信長の妹」という噂を信じて岐阜城下に乗り込んで来た不思議な豪傑として登場する…木下藤吉郎との友情が育まれたが、他方で彼に騙された型になってしまう…やがて彼は本願寺に乞われて、“雑賀衆”と寺に篭る将兵を率いて戦うようになる…

本作では、随所に“中世的様相”が“近世”へ移ろう様に関することや、戦国時代に凄まじい勢いを誇った一向宗に関することの解説的内容も在る。それもためになる…しかしそんなこと以上に、「“女”と“戦”」を追求する孫市の痛快な生き様、信長勢に立ち向かう巧妙な戦いぶりなど、非常に愉しめる内容なのが嬉しい。

最近は色々な媒体のお陰で“戦国モノ”が人気なようだが…本作は昭和40年代前半の作品ながら、現代の若い読者にも愉しんで頂き易い内容であると思った…

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尻啖え孫市
Excerpt: 紀州雑賀の傭兵集団の頭領、雑賀孫市を通して戦国日本の地殻変動的な変化を描く...
Weblog: 司馬遼太郎を読む
Tracked: 2010-08-29 16:09