『臥竜の天』―火坂雅志が描くなかなかに魅力的な“伊達政宗”

火坂雅志の作品が新たに文庫で登場した!!“新刊”として書店に並んでいるのを見掛けて、とりあえず入手した!!そして…前の週に何かゆっくり出来ずに草臥れていたので、「多少読書にでも興じてみよう…」と本を手にし、そのまま夢中になってしまい、殆ど一気に読了してしまった…


臥竜の天 長編歴史小説 上


臥竜の天 長編歴史小説 中


臥竜の天 長編歴史小説 下

火坂雅志は、どちらかと言えば「時代モノの“劇中人物”として時々登場するが、然程掘り下げられてはいないかもしれない人物」を主役に据え、なかなか面白い物語を綴ってきたと思う。幾つか読了したが、どれも凄く面白い!!

が、“伊達政宗”となれば取上げられてきた機会もそれなりに在った人物である。これは結局『天地人』の“劇中”に登場したことが切っ掛けで、『天地人』と同時代に“上杉”とは違った在り方で生き抜いた“伊達”を描いてみたくなったということなのであろう…

『天地人』の兼続や景勝と言った武将達が重んじたとされる“仁”や“義”とは別な、“合理主義的”な価値観を持ち、「情を押し殺して野心の成就を目論む」というような政宗…或いは両作品は“表裏”を成しているかもしれない…

『臥竜の天』の物語は、“伊達政宗”の物語では非常に有名かもしれない「拉致された父・輝宗を、拉致した敵と共に殺してしまった」という一件から始まる…各地の領主達が複雑な縁戚関係に在る奥羽では、争いの場面でも「徹底的に戦って殲滅」というやり方が避けられてきたのだが、政宗はそれを敢えて行い、“奥羽の戦国”に一石を投じて波紋を拡げていた…そんな中で起こった事件であった…

これ以降、よく知られた政宗の物語が展開することになるのだが…本作の題が示すように、政宗は「天へ上る機会を伺って地上に臥す竜」、“臥竜”になぞらえられる。寧ろ“悪役”的なやり方も辞さない政宗だが、晩年近くまで「天下盗りの野望」を抱き続けている。

「天下盗りの野望」の故に、政宗は晩年まで多くのことを学び、様々なことを実行する。戦国時代の末期から江戸幕府の成立期、仙台62万石の礎を築く領国経営の努力と、飽くなき戦いが続く…

『臥竜の天』の物語の最後の方…政宗は宇和島10万石を得て、妾腹の息子、秀宗を領主に据える…“宇和島伊達家”の始まりだが…この“宇和島伊達家”は、幕末に少々目立つ活躍が在る…本作の前に読了した吉村昭の『ふぉん・しいほるとの娘』にその辺りが紹介されていた…

火坂雅志は既に幾多の作品で“史観”というようなものを一貫して打ち出しているように思える。“豊臣政権”は“中央集権”的在り方を探る勢力と“地方分権”的在り方を探る勢力との争いのような状況で混沌とし、“徳川政権”は“地方分権”的在り方を是とし、そこに“法治主義”を持ち込んで所謂“幕藩体制”を確立させていくというものである。本作『臥竜の天』、前に読了した『虎の城』『天地人』…何れもそうした流れで綴られている…『臥竜の天』の政宗などは、そうした流れの中で、「北の国から“物申す”!!」という気概が溢れる人物として描かれているように思えた…

そういうのが“面倒”と思われる方も在るのかもしれないが、火坂雅志作品は「時代モノはこうありたい!!」というような、勇壮な場面や艶めいた場面も多く、非常に愉しい。未だ文庫本が登場したばかりで、未読の方の方が多いように思うので、そんな方の愉しみを妨げることを避ける意味で敢えて仔細は綴らないが…これは好い!!爽やかな読後感で、何か“力”をも貰えそうな作品だ…

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